田口式キック

今日は、奥さんが仕事で遅くなっているので、思い出日記をまた綴ってみる。

タイトルを読んでも意味が分らない人が多いと思う。WADA先輩達が卒業して
2年生の時に、バタフライからブレストへの種目の変更になった。

WADA先輩の活躍もあって、県大会は6連覇になったが、次の年のメドレー
リレーのメンバーで唯一ブレストストロークが他の中学の3年生より遅く、
自分の種目ではないが、うちの3年生より僕のほうが速かったので、僕が入れ
られることになった。

平泳ぎは、小学生の頃から泳げたし、川や湖では平泳ぎのほうが普通で、
特に霞ヶ浦などで行われる遠泳では、みんな平泳ぎだった。
だけど、競泳の平泳ぎは全く別な泳ぎ方をする。

遠泳では大きく腕を回して水を掴むが、速く泳ぐためにはそれより少し小さい
半円で動かすし、足も遠泳より小さい半円を描いてキックする。しかし、それは
誰もしているので、特に試合ではもっと他の方法で速く泳ぐ方法がないか研究
した。

当時の中学校で、ビデオテープを使って自分の泳ぎや有名な選手の泳ぎを
モニターで見ながら研究しているような学校は、うちしかない。とにかく、進んで
いたと思う。

毎週、一回はクラブの日というのがあった、クラブは課外活動だけど1時間だけ
正規の時間に組み込まれている日がある。それは、木曜日の６時間目だった。
その日は、「田口式キック」についての勉強だった。

田口信教さんは、当時の日本水泳会のヒーローである。ミュンヘンのオリンピック
で、100m平泳ぎで世界新記録で優勝している。この人は、メキシコ大会でも、準決
で、当時の世界新記録を出していたが、泳法違反で失格となっていた。

ビデオはその失格した時の映像だった。今のルールでは水中に体が全て入っていても
反則にはならないが、当時は体の一部が出ていないといけなかった。また、田口さんの
編み出したキックは、ドルフィンキックと間違われていた。

ドルフィンキックはバタフライの時の泳ぎ方で、両足をそろえて、甲の部分と脛で水を蹴る。
しかし、平泳ぎはは、半円を描くようにし、足の裏で水を後ろに蹴る。
では、田口さんはどうしたかいうと、両足を少し八の字に開き、足の裏を返して直線的に
蹴りだすようにしていた。これがドルフィンキックのようにプールサイドからは見えたのだ。

しかし、世界記録を出した泳ぎなので、部活の先生は疑惑の泳法とか言われるテープを
NHKから借り出して見せてくれた。僕はとてもシヨックを受けた。その泳ぎ方は今までには
ない方法だったし、先生は今度のオリンピックでも田口はこれで泳ぐと聞かされたからだ。

その日の、放課後からすぐ練習した。飛躍的に速く泳げるのには驚いた。僕のベストは、
100m平泳ぎで、1分20秒くらいだった。当時の県大会の標準記録が1分15秒くらいだった
けど、一日でそのタイムは突破した。
ちなみに、世界記録は1分5秒から6秒だった。だから、あと何秒かで、僕も世界が見えてきた
ように思えた。

しかし、そんなに世の中は甘くなかった。隣の市の中学校でも同じ勉強をしてたのだ。
それは、人の良い僕らの監督が、その中学校にもビデオを貸してしまったからだ。

直近の県南大会で、今まで負けたことの無い、５中のTAKIくんに負けてしまうこととなる。

タグ：平泳ぎ 田口式キック

コメント 1

私のブログにコメント有り難う御座いました。その件につきましては改めて・・・。水泳の話しですがどの記事からも貴方のお気持ちが良く解ります。家の息子も河童の生まれ変わりではないかと思うほど水泳が好きです。中学で数学を教えていますが人生の青写真は１２歳の時から・・・（母校で水泳を教えたい）それだけの理由。現在の赴任校に水泳部が有りませんので野球部の顧問。夏は県や地域などで水泳大会のお手伝いをさせて頂いています。理解のある嫁なので助かりますが彼女や孫は寂しい思いをしていることでしょう。又読ませて頂きます。
by 嫁・姑そしてばあば (2008-05-06 20:15)